腎性貧血は、慢性腎臓病(CKD)や腎不全患者に共通して見られる貧血の一種です。小児患者においても重要な問題であり、成長や発達に影響を与える可能性があります。
小児における腎性貧血の特徴
小児の腎性貧血は、成人とは異なる特徴を持っています:
- 成長への影響:貧血は小児の成長や発達を遅らせる可能性があります。
- 年齢による基準値の違い:小児の貧血の基準値は年齢によって異なります。
小児の腎性貧血の診断
小児の腎性貧血の診断には、以下の検査が重要です:
- 血液検査:赤血球数、ヘマトクリット(Hct)、ヘモグロビン(Hb)などを測定します。
- 鉄代謝関連検査:血清鉄、全鉄結合能(TIBC)、フェリチン、トランスフェリン飽和度(TSAT)などを測定します。
- その他の検査:エリスロポエチン(EPO)レベルの測定や腎機能の評価を行います。
小児の場合、年齢や性別に応じた基準値(表)を用いて診断を行うことが重要とされています。
年齢 | 性別 | 貧血の基準値 (Hb値) |
---|---|---|
15歳以上 | 男性 | 13.0 g/dL未満 |
15歳以上 | 女性 | 12.0 g/dL未満 |
12歳以上15歳未満 | 男女共通 | 12.0 g/dL未満 |
5歳以上12歳未満 | 男女共通 | 11.5 g/dL未満 |
生後6か月以上5歳未満 | 男女共通 | 11.0 g/dL未満 |
採血結果の見方
腎性貧血の診断・治療効果判定において、採血結果は非常に重要です。以下は、主な採血項目とその見方についての説明です。
- ヘモグロビン(Hb):ヘモグロビンは赤血球中のタンパク質で、酸素を運搬する役割を担います。腎性貧血の診断/治療効果判定には、Hb値が重要です。
- フェリチン:フェリチンは体内の鉄の貯蔵量を示す指標です。腎性貧血の患者では、鉄欠乏を防ぐためにフェリチン値を定期的に測定します。一般的な目標値は以下の通りです:
- 透析患者:100 ng/mL フェリチン値が高すぎる場合には、鉄過剰のリスクがあるため注意が必要です。
- トランスフェリン飽和度(TSAT):TSATは、血液中のトランスフェリンというタンパク質に結合している鉄の割合を示します。TSATは以下の式で計算されます:
- TSAT = (Fe / TIBC) × 100
- TSATが20%以下の場合、鉄欠乏と判断されます。目標値は20%以上が望ましいとされています。
採血結果の解釈例
- 例1
- Hb: 10g/dL
- フェリチン: 50 ng/mL
- TSAT: 15%
- 例2
- Hb: 11g/dL
- フェリチン: 250 ng/mL
- TSAT: 25%
小児の腎性貧血の治療
小児の腎性貧血の治療には、以下の方法があります:
- 鉄剤治療:
- 経口鉄剤:鉄欠乏性貧血に有効です。ただし経口鉄剤は独特の金属味があり、多くの小児にとって受け入れがたい味である可能性があります。また、小児は成人と比べて薬の必要性を理解することが難しく、定期的な服薬を維持することが課題となります。実際に我が家でも、内服させるのに工夫が必要で、鉄剤内服が必要な際には、チョコ味のものに混ぜて内服させていました。
- エリスロポエチン製剤治療(ESA):
- 成人の腎性貧血治療ではよく使用される薬剤で、小児患者に対しても効果的です。ただし注射薬剤になるので、投与には痛みの問題が生じます。腎性貧血の治療としては一般的な治療法です。
- HIF-PH阻害薬治療:
- HIF-PH阻害薬は内服薬で新しい治療法として注目されていますが、記事執筆時点では小児への使用については更なる研究が必要です。
まとめ
小児の腎性貧血は、慢性腎臓病や腎不全を抱える子どもたちにとって重要な課題です。成長や発達に影響を与える可能性があるため、早期診断と適切な治療が不可欠です。診断には年齢に応じた基準値を用いた血液検査や鉄代謝関連検査が重要で、治療には鉄剤治療やエリスロポエチン製剤治療などがあります。特に小児の場合、薬の服用や注射に関する課題があり、家族や医療者の工夫や支援が必要となります。我が家の経験からも、子どもの状態に合わせた対応が大切だと実感しています。今後、HIF-PH阻害薬など新しい治療法の研究が進み、小児患者のQOL向上につながることが期待されます。腎性貧血と向き合う子どもたちとその家族に、より良い支援と治療選択肢が提供されることを願っています。
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