【2024年時点】腹膜透析メーカー3社比較!選び方のポイントを解説

腹膜透析

腹膜透析は、慢性腎不全患者さんの生活の質を大きく向上させる重要な治療法です。日本では主に3つのメーカー(ヴァンティブ(旧バクスター)、テルモ、JMS)が腹膜透析製品を提供しています。本記事では、これら3社の製品やサービスを比較し、患者さんやご家族が最適な選択をするためのポイントをご紹介します。

各メーカーの概要と特徴

  1. ヴァンティブ(旧バクスター)
    • 2024年5月1日に社名変更
    • 世界97カ国以上で使用される信頼性の高い製品
    • 特徴:国際的な知名度、豊富な実績、先進的なリモートモニタリングシステム
  2. テルモ
    • 1980年から腹膜透析システムの開発に着手
    • 国内市場での高いシェア
    • 特徴:日本企業としての信頼性、使いやすさを重視した製品開発
  3. JMS(ジェイ・エム・エス)
    • 安定した品質の製品提供
    • 国内の医療環境に適した製品開発
    • 特徴:きめ細かいサポート、日本の医療ニーズに合わせた製品

製品比較

1. デバイスを用いた接続方法

ヴァンティブ

  • 「つなぐ」:自動接続システム
    • 自動化された簡単操作:回路にキャップをつけたまま器材をセットするだけで自動接続
    • UV(紫外線)照射機能:接続部を自動で殺菌
    • 音声ガイドと液晶ガイド:操作をわかりやすくサポート
    • コンパクト設計:持ち運びに便利
    • 安全機能:クローズドシステムによる感染リスク低減

テルモ

  • 「むきんイージー」:無菌接合装置
    • 自動化された簡単操作:チューブをセットしてカバーを閉じるだけ
    • 音声ガイド機能:操作手順を分かりやすく案内
    • 軽量・コンパクト設計:持ち運びしやすい
    • 急速充電機能
    • 加熱溶融加圧接合方式採用

JMS

  • ツインバッグシステム:簡便な操作
  • 独自の接続システムでスムーズな操作

2. マニュアル接続システム

テルモ

  • 「カチットタイプ」システム(2019年2月発売)
    • トランスファーチューブに接続完了音(カチッ)
    • 保護キャップに翼状の持ち手(ウイングタイプ)
    • 「クリックセーフ」として展開
    • 特徴:接続時の持ちやすさ、接続完了の分かりやすさ、菌汚染リスク低減
    • 高齢者でも簡単で安全に操作可能

JMS

  • 「ZERO SYSTEM」
    • 手動式で電源不要:災害時や停電時にも使用可能
    • クローズドシステム採用で感染リスク低減
    • フェイルセーフ構造による安全性向上
    • クリック感で接続完了確認可能
    • 切り離し時に流路を自動閉鎖
    • 補助器具「テデタン」:軽量(850g)で簡単操作

3. APD機器

ヴァンティブ

  • ホームAPDシステム「ゆめ」
    • 世界97カ国以上で使用される高信頼性
    • 24時間サポート体制
    • 少液量モード搭載で幅広い患者に対応
    • 非落差式注排液システムで寝具を選ばない
  • 最新機種「かぐや」
    • 注意:小児(20kg未満)では現在使用できません
    • 成人患者向けの高機能モデル
  • 排液はタンクにたまるため、定期的な掃除が必要

テルモ

  • APDシステム「マイホームぴこ」
    • 大きな液晶画面と音声ガイドで簡単操作
    • 静音性に優れ、夜間使用に適している
    • 小容量対応機能で小児患者にも配慮
  • 排液はタンクにたまるため、定期的な掃除が必要

JMS

  • APDシステム「PD-Relaxa」と「PD-MINISOLA」
    • 小型軽量で操作が簡単
    • Bluetoothによるリモートモニタリング機能
    • 小児対応機種あり
  • 排液は排液バッグにたまるため、タンクの掃除が不要

4. リモートモニタリング

ヴァンティブ

  • シェアソースシステム:遠隔モニタリング可能
  • MyPDアプリ:治療データをリアルタイムで医療者と共有

テルモ

  • テルモPDマイケアアプリ:データをクラウドに記録し、家族とも情報共有

JMS

  • Relaxaリンク:バイタルデータを自動収集し、医療者が遠隔確認可能
  • プリンタ内臓:印刷された治療結果をノートに貼り付けるだけでOK(医療機関や主治医の先生の判断によっては、ノートへの記録が必要な場合もあります。)

サポート体制

3社とも24時間対応のサポート体制を整えています。

小児腹膜透析における重要ポイント

小児患者の場合、以下の点が特に重要です:

  1. 家族の負担軽減:使いやすさとサポート体制の充実
  2. 感染予防:接続システムや無菌操作に優れた製品

各メーカーは、これらのニーズに応える製品やサービスを提供しています。

注意点

腹膜透析メーカーの選択に関して、以下の点に注意が必要です:

  1. 病院によって選択できるメーカーが異なる
    • 全ての病院で3社の製品が使用可能というわけではありません。
    • 現在のシェアは、ヴァンティブが最も多く、次いでテルモ、JMSの順となっています。
    • 希望するメーカーの製品が使用できない場合もあります。
  2. 事前確認の重要性
    • 腹膜透析を検討する際は、まずかかりつけの病院に相談し、どのメーカーの製品が選択可能かを確認することをおすすめします。
    • 医療機関の方針や在庫状況によって、選択肢が限られる場合があります。
  3. APDの排液処理の違い
    • ヴァンティブとテルモのAPD機器は排液がタンクにたまるため、定期的な掃除が必要です。
    • JMSのAPD機器は排液が排液バッグにたまるため、タンクの掃除が不要で、この点で維持管理の手間が少なくなります。
  4. マニュアル接続システムの利点
    • テルモの「カチットタイプ」やJMSの「ZERO SYSTEM」など、マニュアル接続システムは電源不要で災害時にも使用可能です。
    • 高齢者や手先の不自由な方にも使いやすい設計になっています。

これらの点を考慮し、主治医や看護師と相談しながら、自分に最適な選択をすることが重要です。

まとめ

腹膜透析メーカー3社(ヴァンティブ、テルモ、JMS)の製品を比較しました。選び方のポイントは以下の通りです:

  • 使いやすさ:操作の簡便さ、画面の見やすさ、音声ガイドの有無
  • 安全性:感染予防機能、自動化システム、マニュアル接続システムの特徴
  • モニタリング:リモートモニタリング機能、データ共有の容易さ
  • サポート体制:24時間対応、訪問看護、家族サポート
  • 災害時対応:電源不要のシステムの有無

製品選びは生活の質に多少なりとも影響を与えます。主治医や看護師と相談しながら、自分に最適な選択をすることが重要です。各メーカーの最新情報や詳細については、直接メーカーや医療機関にお問い合わせください。腹膜透析技術は日々進歩しており、新しい製品や機能が追加されている可能性があります。

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